★月刊・沈黙の兵器 第00007号 '05/8/29 ★

      特別重要号 ━━━ 9・11選挙前に必ずお読み下さい
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愛知万博に行ってきました。
 NEDOツァーという新エネ関連ツァーに参加した後、各国パビリオンを廻ったわけですが、ロシア館が期待より良かった。まずそれほど並ばずに(約5分程度)入れたこと、マンモスを見れたこと、ロシア製3人乗り小型スペースシャトルのモックアップ(実物大模型)が見れたことです。
 どこの館か名前は忘れましたが、TVで有名なマンモスの展示会場は並ぶのが大変らしい。結局そこには行かなかったですが、ロシア館のマンモスはまず実物の骨を多く使用した実物大の骨格再現モデル、厚さ1cmの皮膚の実物、体毛の実物、足の一部の実物、胃袋の一部の実物など結構見応えがありましたよ。


マンモスの牙は百キロもあるらしい!
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■■■バブルの目的は何だったか?(2)■■■

本誌第5号では「バブルの真犯人は日銀」であり、「窓口指導という信用統制の秘密テクニックを使った」、と述べた(未読の方はぜひともバックナンバーをお読み頂きたい)。また本誌第6号では「バブルの目的」を理解するために、戦後の日本の経済発展や社会構造を解説した。今回はその続篇である。

ちなみに一般的には「市場原理」という考え方が支配的であって、バブルも自然発生的に生れた台風のようなものであったというふうに考えられている。ちょうどそのころ日本の社会構造は「制度疲労」を起こしていたのであって、そこから矛盾が顕在化して、バブル発生とその後の長期不況が続いたのだ…と。
 例えばある経済学者はバブルの原因を次のように分析している:(傍線筆者)
【引用開始】『
 日本は依然として膨大な貿易黒字を抱えていた.先の低金利政策と相まって,結果として国内には過剰流動性を発生させてしまった.銀行にもお金が余っていた.厳しい競争の中で銀行経営を成り立たせるためには,余った預金を安易に企業や個人に融資せざるを得なかった.多くの企業や個人は,借りた資金を株や不動産のような投機色の強い投資に使い,財テクに明け暮れていた.
【引用終了】』(出典:http://www.iuk.ac.jp/~laismit/rsjp_0302%20Japan%20Bubble.htm
 融資せざるを得なかった点を、さも自然現象のように説明している。筆者(およびヴェルナーなど)の主張は、日銀が窓口指導を通じて融資を強制したから、「融資せざるを得なかった」のだ(しかも重点融資先を株や不動産業界に指定)と考える。しかし一般的にはそうした主体的な影響力を言及せずに、その可能性すらも考えないのである。
 これが一般的で典型的な考え方であるから、「バブルは意図的に創られた!」という筆者の主張を納得してもらうには、少々の表現力では限界を感じてしまう。例えば意図的に創られた証拠として、日銀や銀行関係者の証言がありますとか、統計データからそう読み取れますと言っても納得して頂けない。そんな証言は信用できるのかとか、統計データの読み方は他にもあるぞ、などと反論される。

そこで次のように考えて頂けないだろうか。
 1)日銀の窓口指導によってバブル発生は技術的に可能であったか?
 2)バブルを創って一体何をしようとしたか、つまりその目的が納得できるか?
…というわけである。ここで政治や経済の問題を考える際の公理を提案したい。
 ★[政経問題における目的達成の公理]★
 重要な目的があって、技術的に可能であれば、必ず実行する。
  (かりにその手段が多少非合法か反社会的であっても…である)
こうした視点から、本誌第3号本誌第4号から読み返して頂けないだろうか。そして今回第7号とあわせ総合的にご理解頂き、日銀が意図的にバブルを創ったことが、1)技術的にも可能であったし、2)目的も納得できることを、期待したい。

★★ 目的は日本の構造改革! ★★

前号でご紹介した株式会社の構造図(=ほぼイコール最近までの日米社会構造の重要な相違点)に再度登場してもらわねばならない:


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前号の反復になるが、日本型資本主義は、株式は主に安定株主(系列企業やメインバンク)が所有、資金調達は主に銀行融資、などの理由で、経営者が株主をあまり意識せずに、従業員との家族的経営が可能であった。国民の最大多数の幸福を願うのであれば、日本型には多くの長所があった、と筆者は思う。
  一方、米国型資本主義では、資金調達を株式市場から行なうため、株主がダイレクトに利潤=株式配当または株価上昇を要求するので、経営者は株主の方に目線が向いてしまう。米国型は、少数の金持ちには嬉しいシステムである。

だが日本人は太平洋戦争のときと同様、その戦後の復興にすらも頑張り過ぎてしまった…。前号で述べた理由で、いくらアメリカが日本の戦後の経済発展を「許した」といっても、許容範囲を超えてしまったのだ。
 トヨタに代表される企業群が、アメリカの屋台骨さえも揺るがしかねない貿易摩擦となってきたのである。1980年代に入ってからの話である。これは国力を発展させる意味でも、もともと日本型資本主義が優れていたからの証左に他ならないのだが…。
 つまりアメリカは、それまでの経済発展を許容する(ただし日本人のマインドは3S政策や戦後教育で衰退させる)政策から、日本を叩き潰す政策に転換した!、との仮説が考えられるではないか?
 ただし単純に叩き潰すには問題があった。両国はあまりにも経済的に依存関係が強くなりすぎ、例えば米軍の兵器にも日本の技術が多く導入されている。
 それからすると、日本を金融植民地にする政策に転換したという仮説の方が正しいかもしれない。金融技術の発達によって新しい形態の植民地経営が可能となってきたこともあり、またこれなら日本のおいしいところは利用できるからだ。早い話、日本のおいしい会社をカネで買収しようというものである。(アメリカにそんなおカネあるの?、って疑問も出るだろうが、そこが金融技術たるところである.また主体はアメリカだけではなく、ロンドンやスイスにまたがる国際金融資本である.詳細は別の機会に述べたい)
 最高に面白いというか、哀れなことに、この日本金融植民地計画は、日本側も大歓迎で迎えるのである。なぜなら、バブル後の長期不況に苦しんできた日本にとって、外資導入は日本経済の活性化に大歓迎という虚構が、一方では用意されているからだ。(なんという狡猾さではないか?)
 なお、仮説を立て、推論し、事実と比較検証することは、通常の科学的手法であるから、念のため。

では上記目的達成のため、アメリカとしてはどのような方策が「技術的に可能」か?
 最大の武器は、日本銀行である。
 筆者は繰り返し述べているが、日本国家で最大の「実質的」権力者は中央銀行家!である(本誌第3号参照)。次の選挙のことを考えざるをえない総理大臣や、象徴だけの天皇陛下ではない。それに対して、中央銀行は、新しい「購買力の配分」を支配しているからだ。社会の現実は、ほとんどがおカネで動いていることを、皆な知っているはずではないか。

重要なことなのでこれも前号を繰り返すが、戦後最初の日銀総裁は一万田尚登である。彼が占領軍GHQの意思によって選ばれたことを否定するものはいないであろう。彼は占領下の日本で「法皇」とすら呼ばれたのである。そして大事なことは、彼に続く歴代日銀総裁も、直前の総裁が自らの指名してきた。この指名の際、当然ながら「メガネに適った」人物=米国側の考え方をする人物(もっとハッキリ言えば米国のスパイ)を選ぶであろう。そうでなければアメリカが許すはずも無い。ただし、かつて大蔵官僚が総裁になった期間もあったが、それは体裁上の傀儡であり、実質的な総裁は別にいたことについて、ヴェルナー著「円の支配者」(草思社)に詳しい。
 つまり戦後の日銀は、アメリカの意向に沿って動いてきた!、ということを、筆者は繰り返し述べている。
 日本の経済発展をアメリカが許容していた時代ならまだしも、この事実に日本国民は早く気付くべきではないか?

貿易摩擦が表面化してきた1980年代に入って、アメリカがどのように考えたかを推理してみよう。ただしこれは通常の人間界の話ではなく、魑魅魍魎とした政治の世界の話であることを忘れてはならない。
 ここに智慧がある。
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 縮じめるには、まず張らねばならない。
  弱めるには、まず強めねばならない。
   廃するには、まず興さねばならない。
    奪うには、まず与えねばならない。
       ━━━━━━━━━ 老子

 プラザ合意(1985年)において、会議に出席した時の蔵相の竹下登は、日本円の価値を上げるようアメリカから懇願され、「かつての敗戦国日本がここまで来れたか!」と、たいへんに満足そうだったという。
 この直後から、日銀を最大の武器として、バブル経済は始まった…。

日本を金融植民地にしようという目論見は、日本では「構造改革」と呼ばれ、巨視的にみて少なくとも次の3つの段階が計画され、現在進行中と推論できる。いやかなり完成に近いというべきか。


■■ 構造改革の本質 ■■
(=日本金融植民地化計画)
 ★1)日本型資本主義から米国型資本主義に
   …… こうしないと会社買収がやりにくいでしょう?
 ★2)民営化を促進して、小さな政府に
   …… 民営化したら買収も可能ですね.また小さな政府は弱い政府でもある.
 ★3)自由化を促進し、外資導入歓迎で、会社法を改定に
   …… 既に新会社法は可決され2007年施行!.これで外資は自由に企業買収できる.


これらはすべて、バブル崩壊(1990年)の結果、起こってきたことではないか?
 紙面の関係上、★1)日本型資本主義から米国型にするにはどうするかを中心に簡単に説明するが、前出の図「株式会社の主な資金調達方法」からも明らかなように、
 ★銀行の貸出総量を縮小させる
 ★銀行の保有株式を放出させる
 ★系列間の株持ち合いを縮小させる
ことによって、安定株主制度を縮小させることが必要である。

バブル崩壊のその後に起こった主な事件を具体的に列挙すると、
 ●銀行は巨額の不良債権を抱えた。(巨額不良債権は終戦直後もあったが、その時は日銀がその債権を買い取って解決していった.今回はちょうどその逆で、銀行が不良債権を抱えるように日銀がバブルを創ったのである)
 ●このため銀行は貸し渋りを始めた。 (実際は日銀の窓口指導によるものだが、不良債権問題は良い口実を与えた)
不良債権だけではない。追い討ちをかけるように、BIS規制(BIS=スイスにある国際決済銀行)による
 ●自己資本比率8%達成の外圧、(これでますます貸し渋りが進行)
グローバルスタンダードという掛け声の中での
 ●会計制度の時価評価主義へ移行せよとの外圧、(株価が下がると決算も下がる)
97年のアジア通貨危機などに影響された結果の
 ●為替変動や株価への不安定感の増大、(銀行は保有株を売り安定経営を)
それまでの「護送船団方式」への批判の高まりの中、
 ●ビッグバンに代表される規制撤廃・自由化移行への外圧、
などなどで目白押しに「攻撃」が加えられた。(これらを市場原理による「偶然の産物」と思えるのか?
 これだけ攻撃されれば、銀行は保有株式を売らざるを得ないではないか。ただし大量売りは自分で株価を押し下げてしまうから、時間をかけなければならないが…。(株価が長期にわたり安値が続いた最大の原因はここにある)
 こうして、安定株主は確実に減少したのである!
 どれだけ安定株主が減少したかについて、次のグラフに示す:



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株式市場における安定保有比率及び持ち合い比率の推移
出典: 経済産業省通商白書2003第1−3−24図 
http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2003/

現在2005年は、安定株主は更に減っているはずだ。上記グラフの延長という意味だけでなく、2002年度から日銀が民間銀行の保有株を大量に買い取ったり、外国人の株式市場に占める割合がここ数年で30%近く(1990年は僅か5%)にまで伸びているからだ。日本政府も、銀行等保有株式取得機構なんていう財務省・金融庁の共管の認可法人まで設立する念の入れようなのである。
 確実に日本型資本主義が「改造」されているのを、お分かり頂けただろうか?

つぎに、★2)民営化について少し述べる。
 日本型資本主義がうまく機能していた80年代前半まで、ほとんどこのような議論は無かった。民営が良いのか官営が良いのか、もちろんそれぞれ長所もあり、短所もある。
 1985年に日本電信電話株式会社が発足、1987年にはJRが発足したが、今年2005年4月に発生したJR宝塚線(福知山線)の脱線事故などは、民営化により競争が激化したことが大きな原因であると、広く語られているところだ。
 にもかかわらず最近、民営化が声高に叫ばれる背景に、バブルの後遺症があることは明白だ。
 バブルに続く「失われた10年」と呼ばれた長期不況の結果、政府借入金および国債残高は1990年の200兆円から2004年には750兆円にまで膨らんでしまう。これは景気対策のために巨額の公共事業を行なったのが大きな原因であるが、このとき不要な道路を作ったりして評判を落とし、しかも借金だけ膨らんで景気は回復しなかった等々、「官」への不信感が醸造されていった。
 これだけ国家の負債が増大すると、国家の収入は税収しかないとする「虚構の経済学」を信じ込まされている米国留学組の識者が中心となって、民営化して小さな政府にすれば財政改善可能という虚構(本誌第4号参照)に更にハマっていった結果が、なんでもかんでも民営化という最近の風潮ではないか。

最後に、外資導入のための★3)新会社法(2007年まで段階的に施行)であるが、知らない人があまりにも多いのに驚く。
 一般人がこの法律を知らないというだけではない。この法律を作った国会議員も、それを報道するマスコミも、規制緩和・自由化の流れの中で当り前のように受け止めているのであろう。
 ただし知る限り、評論家の森永卓郎は「日本企業買収の最終局面」と捉えている。(筆者と話が合うかも?)

★★ 驚異のSII = 年次改革要望書! ★★

ここまで読まれても、日本金融植民地化計画は単なる仮説であり、まさかぁ、と思っている読者もいるかもしれない。
 では良書をご紹介しよう:
★関岡英之(著)「拒否できない日本 − アメリカの日本改造が進んでいる」(文春新書)
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166603760/250-6543688-3642627

 内容の要所を少しコピーしてみる:(……は筆者が省略した部分で、<>は筆者の挿入)
【引用開始】『
 アメリカ政府からの公式文書である「年次改革要望書」の全文が日本のマスメディアに公表されたことはない……<が実は>日本語に翻訳され、在日アメリカ大使館の公式ホームページで公開……<これは内政干渉であるが>伏せようと努力しているのは、干渉する側<=アメリカ政府>ではなく、もしかしたらされている側の方<=日本政府>なのかもしれない。……
 年次改革要望書は……アメリカ政府から要求された各項目は、 日本の各省庁の担当部門に振り分けられ、それぞれ内部で検討され、やがて審議会にかけられ、最終的には法律や制度が改正されて着実に実現されていく。……
  そして日本とアメリカの当局者が定期的な点検会合を開くことによって、要求がきちんと実行されているかどうか進捗状況をチェックする仕掛けも盛り込まれている。……
 ……名称自体が日本側による苦心の意訳なのである。英語の原文は Structural Impedement Initiative (SII) となっており、正確には……アメリカが日本の市場に参入しようとする上で邪魔になる構造的な障害をアメリカ主導で取り除こう、という意味である。
【引用終了】』

これでは内政干渉どころか、既にもう植民地状態なのではないか?
 ではアメリカ大使館の公式ホームページで内容を見てみよう:
★2003年度:
 http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-j20031024d1.html
★2004年度:
 http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-j20041020-50.html

郵政民営化もはっきり要望、いや要求、いや「通達」しているし、その他もろもろ細部にわたって大量にあるではないか!
 しかもしかも、これらほぼ全ては、小泉政権が主張していることと同じ内容ではないか!
 小泉政権はアメリカの傀儡と見つけたり!……ではないか?

筆者の友人に、かつて防衛庁長官まで勤めた国会議員の元秘書がいる。その彼が証言するには、「ああ、SIIのことか。これはボクが秘書をしていた20年前からSIIはあって、日本側で何かを決めても、アメリカ側からこうしてくれという連絡がきたら、すべてそれに沿って作りなおさなあかんかったな…」、とさりげなくのたまった。(内心、こいつ日本人のアイデンティティは無いんか?…と思った)
 !!!だが、これが現実なのである!!!

★★ おわりに ★★

そもそも戦後日本は独立国家であったのだろうか? 1952年にサンフランシスコ講和条約が発効してから独立したということになっているが、「独立記念日」すらないではないか? だいいち、人類の歴史の中で、他国の軍隊が進駐したままの状態で独立国家というのはあり得ないのではないか?
 これからは金融植民地化が進行して、宗主国に協力する一部の大金持ちと、大多数の低所得者という社会が実現するであろう。憲法九条は改定され、自衛隊は軍隊に昇格する一方、アメリカの奴隷軍隊と化すのであろう。だが多くの日本人は現実に無関心であり、あるいは巧妙な「虚構」に騙され、真実に対して無知のままでいる……。
 ちなみに、ならばいっそハワイのようにアメリカの一州にしてくれという意見がある。だがそれは物理的に叶わない「夢」である。アメリカの人口は約2億5千万人、日本は約1億2千万人…。日本人にそんな大量の「アメリカ人としての選挙権」を与えるわけにはいかないからだ。


■次号の予定:(未定)

■筆者へのご意見ご感想は:  untilled@yahoo.co.jp

/E