20021114日更新

日銀が経済不況の真犯人! 不良債権を買い取らせよ!

 

0.はじめに

1.日銀とは?

2.バブル発生と長期不況の真犯人

3.日銀に不良債権を買い取らせよ!

4.読売新聞コラムの紹介

 

0.はじめに

本コラムの前作:

実体経済を優先させゴーストマネーの横行を規制せよ!

をサイトにアップしてから3年以上が経過した。

 その時もそうであったが、現在もなお、いやその時以上に日本経済は混迷を深めている。

 今回は、前作の主題「…ゴーストマネーの横行…」よりもさらに本質的な問題を述べる。

 実は前作に於いても、今回の主題を示唆していたのであるが、諸々の事情により具体的言及を差し控えておりました。しかし遂に覚悟を決めて大筋において真実を述べることにします。

 

1.日銀とは?

 明治15年に開業された、と歴史書にはあります(なんと明治政府内閣成立の3年も前のことですぞ)が、最重要着目点は日銀が単なる「株式会社」であることで、資本金はその当時も今も一億円であり、未だかって会計監査報告が為されたことはありません(戦時中など若干の例外はあるかも…)し、その株主が公にされたこともないのです。(全株式の半分は日本国が所有していることにはなっているようだが,問題は残りの半分である.またいくら日本国が日銀の株を半分所有しているからといって,後述の悪法“新日銀法”によって運営に口出し出来なければ何の意味も無い

 以上は、客観的史実資料をもってなに人も確認できることでありますが、明治15年に一億円もの超大金を出資した出資者は誰であったのでしょうか?。これを裏付ける客観的資料を見出すことは残念ながら困難ではありますが、出資者はロスチャイルド家「赤い楯」の意でメディチ家の末裔と言われる)であるという多くの有力な証言があります。

 つまり日銀は、あくまで私的な株式会社であって、しかもその出資者は日本人ではないのですから、日銀が必ずしも日本国益を考えて行動すると期待するには無理がある、のです。

テキスト ボックス:  
著者は日本銀行客員研究員でもあったドイツ人エコノミスト.
草思社 \2,000税別
 さらに「日銀出身の」歴代総裁は、必ず総裁となる以前に、アメリカの連邦準備銀行(FRB)に1年以上は“出向”しており、またそれだけに限らず、総裁になってからも、FRBと親密な国際的協調関係を維持していることは、少し注意を払って観察すれば分かることです。ここで「日銀出身の」と断った理由は、90年代中頃までは旧大蔵省の人間が日銀出身の人間と交代で総裁になっていたからですが、この大蔵出身の総裁がまったくの“お飾り”であったことは、超推薦図書円の支配者(草思社)においても明らかにされています。

 現在、日銀は、1997年に国会で可決された世紀の詐欺的悪法“新日銀法”によって完全な独立権を獲得してしまいました。つまり政府にせよ国会にせよ、実質的に日銀には一切口出し出来ないという法律です。この独立権を獲得するために日銀は、意図的に捏造されたとしか思えないデータや論文によってその権利の正当性を主張したことは、推薦図書円の支配者でも紹介されています。思えば、大蔵省が、より権利を縮小された組織である現在の財務省に格下げされたのも、それ以前にマスコミを賑わした“ノーパンシャブシャブ”(この程度のご乱行は数ある職員の中に存在して当然)に代表される大蔵叩きも、なにやら関連性が想像できるではありませんか。

 いずれにせよ現在、わが日本国は、独立国家として最も重要な権利であるはずの通貨発行権を失ってしまったのです。(事の重大性に気付かない輩が殆どですけどね

 なおアメリカの通貨であり世界通貨ドルを発行している、FRBも単なる「株式会社」であることを知らなければなりません。同様に会計監査がされたこともなく、株主も公表されていないし、1913年に成立した連邦準備法により完全独立権を有している。だが実は、そもそも合衆国憲法第一条八節五項(ここをクリックすると合衆国憲法にリンクしますのでご確認下さいには、合衆国議会のみが通貨発行権を有すると明記されているのだから、FRBの存在そのものが合衆国憲法違反なのである。(こんな事が平気でまかり通っているのだから何をか言わんやである

 ところでFRBの株主であるが、複数の有力な情報によると、それは欧州の王族や上流貴族でありその番頭であるロスチャイルド家!であるという。だとしたら、日銀とFRBは同じ有力株主を拝する兄弟会社ということになる。これでその親密な協調関係は当然と理解できるではありませんか。

 ロスチャイルド氏の有名な言葉を紹介する:

吾に通貨を発行する権利を与えよ.さすれば誰が法律を作ろうと知ったことではない

 

2.バブル発生と長期不況の真犯人

 まず「お金(カネ)とは何か?」を考えていただきたい。金本位制でもない現代では、それは「単なる紙切れ」か、さらにはコンピュータ上での「数字」に過ぎないのである。つまり「信用」を前提にのみ、価値が認められる。よって通貨を発行することを「信用創造」とも呼んでいるのである。

 次に、なぜ(通常の)銀行が中央銀行(つまり日銀)を必要とするのだろうか。簡単に言ってしまえば、銀行に常に必要量のカネがあるとは限らないからであり、資金が必要な時に中央銀行から資金を調達したいからである。中央銀行が銀行の銀行と言われる所以である。ところが現実そうであるが、中央銀行のみが通貨を発行できるとしたら、中央銀行が資金に困ることは絶対にない

 こうした中央銀行の権限のもとに、「窓口指導」という日銀の秘密テクニックがある。なぜ秘密かというと、推薦図書円の支配者でも指摘しているように、日銀は何度もこの「窓口指導を中止」したと発表しているのだが、実際には「窓口指導」を秘密裡かつ継続的に行ってきたからだ。よほど秘密にしたい事なのだろう。この「窓口指導」とは、銀行の担当者が日銀の“窓口”へ毎月のように出向いて“指導”を受ける所から付けられた名称であるが、その指導の内容とは信用創造量の割り当てであり、早い話がどれだけおカネを配分してもらえるかという話である。

 バブル発生当時、日銀はこの窓口指導を通じて意図的に信用創造を大量に行い、各銀行に半強制的に割り当てたのである。では何故銀行側は、そんな必要以上の資金は要らないと断われなかったのであろうか。そのことは推薦図書円の支配者に詳しいが、もし断って割当量の減額を申し出れば、次回からはその量しかもらえないことを意味したから、そんな事にでもなろうものなら熾烈な他銀行との競争に負けてしまう、という心理を利用したのである。こうして日本全国の銀行の支店長が、どうか皆さんおカネを借りて下さい、どうかお願いします、とお願い行脚に狂奔することになったのである。ところがその後突然、日銀は信用創造量を急激に収縮したため、バブルは弾け飛んだ。こうして日本は、不良債権を抱えて「失われた十年」と言われる(もう十年どころではないけど)長期不況に突入することになったのである。

 この長期不況の期間中、少しの例外を除いて、日銀は意図的に信用創造量を引き締めっぱなしである。それを批判されると、「資金の需要がないからだ」と言い逃れている。またこの日銀の主張を擁護する知識人や学者も多いのであるが、それらは「騙されている」結果だと述べておこう。

騙しの典型的な学説を紹介しよう。「中央銀行が経済に対して出来ることは、せいぜい公定歩合の調整でもって微力な関与が出来るのみ」であるとか、「経済の景気不景気はちょうど避けがたい自然の天候のようなもの、或いは制御困難な生き物のようなもの(小泉首相の発言に多いですね)だ」といった説である。信用創造量コントロールの絶大な力を意図的に隠蔽しているのだ。驚いたことに歴史的世界的にも多くの専門家がこれにコロッと騙されて、「太陽の黒点が増えると不景気になる」とまで言い出す始末である。

 では何故、日銀は意図的に日本の国益に反することをしてきたのだろうか。推薦図書円の支配者の著者で、日銀の客員研究員でもあったヴェルナーは、日銀幹部の言葉を紹介している。それによると、「あるグローバルな構造改革という目的のため必要」であり、結局はその方が「日本の国益になる」と考えているのだそうだ。いや、洗脳されていると言った方がよいだろう。彼等が勝手に唱えるグローバルな目的のためには、年間3万人もの自殺者つまり犠牲者(交通事故死の3倍強)が出ているような、こうした長期不況が許されると言うのだ。彼等の構造改革の目的とは何か?、なるテーマは実は小生が詳しいところであるが、別の機会に譲る。(当面の彼等の目標は,EUのように各国通貨発行権を消滅させ,アジア共通貨幣ひいては世界共通貨幣の実現を狙っている

 

3.日銀に不良債権を買い取らせよ!

 日本は、韓国やアルゼンチンなどの多くの債務国のように、(彼等の仲間の)IMFや世界銀行から借金をしているわけではない。国家財政が破綻だ、不良債権をどうしよう等と悩んでみても、所詮は日本国内での「お金のやりとり」に悩んでいるに過ぎない。(一方、日本を韓国のようにIMF等からの借金漬けにさせる秘密計画が存在しても不思議ではないが…

 そうした条件下であるなら、もし貴方が“おカネの本質”を理解していれば、「日銀に不良債権を買い取らす」ことが、最もシンプルで最善の方法であることに気付くだろう。それに元々こうした不良債権の真犯人は日銀なのであるから、当然の尻拭いでもある。

 実は、過去に同じことを日銀は行なった。太平洋戦争の戦後である。

 以下、「円の支配者・第6章」からその部分を転載する:

 

五十年後にそっくりな不良債権

 戦争が終わったとき、銀行の貸出帳簿は惨憺たるありさまになっていた。戦争末期の絶望的な日々に、銀行はさらに軍需産業への融資を強化するよう命じられていた。非生産的な目的のための融資は結局、不良債権になる。戦いに負けたばかりの国の戦費融資は最悪の不良債権になる。銀行のほかの主要な資産は「大東亜戦争国庫債券」その他の戦時国債だった。これらの国債はその後、闇市で記念品として叩き売られるしがなかった。

 銀行の大半の資産は無価値だったが、負債は依然として残った。個人預金者の貯蓄である。資産は負債よりも少なく、銀行システム全体が事実上破綻していた。しかも、民間銀行は財閥解体への動きによってさらに打撃を受けた。貸出など考えられなかったし、現実にできる状況ではなかった。だが銀行の信用創造がなければ、充分な通貨が流通しない。したがって、経済は行き詰まって、深刻な不況に陥った。

 

信用収縮(クレジット・クランチ)の解決法 ―― 国家の銀行家としての日銀

 ひどい状況に見えたが、実際には解決は簡単だった。会計の問題にすぎなかったからだ。一万田と腹心の部下たちは、迅速な回復を実現しなければならないと考えた。そこで、打つべき手を打った。日銀は印刷機のスイッチを入れた。

 一万田は二方向の浮揚策を採用した。第一に、銀行は不良債権を抱えて麻痺状態にあったから、日本銀行を国家の銀行家に変えた。企業は直接、あるいは取引銀行を通じて、日銀営業局に融資を申し込む。日銀では一万田が、戦時中から機能していた融資斡旋部を継続させており、日銀の信用を配分した。彼はどの部門に金を流すべきかを決定した。借り入れが認められた企業は手形を発行し、それを日銀が新しく印刷した現金で買い取る。日銀のお墨付きを得た企業が銀行に手形を売るようになり、銀行業務はふたたび徐々に軌道に乗りはじめた。銀行はその手形を日銀に売却し、日銀が新しい通貨を発行する。新しく創造された通貨が生産的に使われているかぎり、上昇するのは生産高で物価ではない。経済成長は潜在成長率をはるかに下回っていたから、インフレの危険は小さかった。

 

信用統制

 一万田の第二の戦略は、銀行に融資ビジネスを再開させることだった。そのためには、バランスシートを改善させなければならない。これも、じつは簡単だった。要するに、紙切れ同然の戦時国債を日銀が高く買い取ってやればいい。通貨を発行できる中央銀行は、不良債権を心配する必要はない。紙幣を印刷して、帳消しにすればいい。援助してもらうかわりに、銀行はリストラや合併をしなければならなかった。簡単に言えば、一万田の日銀の言うなりになるということだった。したがえば資産は保証される。日銀は必要ならいくらでも資金を提供することができる。

 

 もっとも、以上の日銀の工作は、窓口指導という強力なツールを用いて、大半が秘密の水面下で行なわれていたので、衆目を集めなかっただけだ。こうした中央銀行の工作がなければ、日本の「戦後の奇蹟の復興と経済発展」があり得なかったのである。またこれは、アメリカ側の秘密の目的とも合致していたのである(この問題の議論は別の機会に譲る)。

 だが今回が戦後と違うのは、現在の彼らの目的(つまり世界新秩序建設)のために日本の「構造改革」が必要という観点から、日銀は、この長期不況を確信犯で推し進めている点である。だから、日銀が自ら進んで抜本的な景気回復をやるはずもないし、寧ろそうならないようにジャマをしてくるくらいであろうから、一人でも多くの国民が“日銀の真実”や“お金の本質”に気付いて、世論でもって圧力をかける以外に方法はないであろう。そして最終的には、日銀法を本当の意味で改正して、通貨発行権を国民の手に取り戻さなければならない。(ところが現実は,先述のように、各国の通貨発行権を消滅させ,アジア共通貨幣ひいては世界共通貨幣の実現を,彼等は狙っている

 

 以上の私の主張は、先入観に囚われず直観力の鋭い人には受け入れられるだろう。一方、所謂経済知識を多く持っている人ほど、更には専門家に至っては“噴飯もの”とまで言われるかもしれない。ある人は具体的事例およびアレコレ理論を振りかざして反論してくるだろう。だがそれらは信用創造の持つ絶大なパワーを矮小化するだけでなく、更に隠匿し否定さえする国際中央銀行家達のプロパガンダに“洗脳”された結果なのである。東大や京大出身の旧大蔵官僚エリートですらこれにコロッと騙されたた結果、大蔵省が解体させられる憂き目を味わったのであるから、悲しいかな何をか言わんや、ではあるが……。(こうした観点から「円の支配者」を読むと面白いよ!)

 

 他の方法として、日銀に国債を買わせることや、インフレ目標を設定することなどがよく議論されている。だがマネーの原理からいってシンプルではない。

 日銀が銀行保有株を買い取る、という案を200210月に日銀が発表した。短期的にみれば悪くない方法ではあるが、問題は日銀がその株を売って“儲けた”場合、その分だけ全体の信用創造量は減少するから逆効果の可能性がある。この案は日銀自らが発表した案だけに、こうした時限爆弾が仕掛けてあると考えるのは考え過ぎであろうか?。

 さらに今月11月なんと、日銀が不良債権処理機構に超低利で融資するという、比較的マシな計画を発表した。次節で紹介するような、心ある識者からの日銀批判(でも少数派)の高まりを意識した発表であろうが、どうせ融資規模にしても少ないだろうし、“日本のことを真剣に考えて色々やってますよ”を言いたいだけのジェスチャーに過ぎない、と私は思う。考え過ぎだろうか?(否!)

 いずれにせよ、日銀が国益に反した存在であることに気付かない今の小泉内閣のやり方では(構造改革という彼の言葉は、何故か日銀幹部の発言と同じですね)景気は悪くなる一方であって、野党の主張もピント外ればかりである。

 

 なんと!、20033月には日銀総裁に福井俊彦氏が就任してしまった!!!

 なにが「民間から起用する」だ!。確かに直前の身分は富士通総研理事長であり民間かもしれないが、彼はもともと生え抜きの日銀エリートではないか!。しかも最もバブルが膨らんだ869月から895月までその実行犯の責任者である日銀営業局長を務めただけでなく、その後の「失われた十年」を演出した9412月から984月まで(大蔵出身の松下康雄総裁を傀儡として)実質的な支配者であった日銀副総裁を務めた男ではないか!

  ああ、バカバカしくって話にならない。哀れな日本国民……。

 

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4.読売新聞コラムの紹介

少数派ではあるが、当然の日銀批判をしている素晴らしい意見を2つ紹介する。世界的に流布された“騙しの経済学”に騙されずに、正論を述べている。(赤文字は筆者)

 

1)

 

株安の警告

(2)浜田 宏一氏(米エール大学教授)

「インフレ目標」が有効

 株価急落に対応して、まず取り組むべきは、日本経済を覆っている深刻なデフレ(持続的な物価下落)の進行を止めることだ。

 ところが、日本では、デフレ阻止の緊急性について、なかなか総意が得られない。学者、官僚、エコノミストなどは失業の危険が低いためか、「デフレは物価が下がり、良い面もある」などと主張する向きもある。

はまだ・こういち しかし、日本経済全体にとっては、デフレは企業の売り上げや個人の収入を減らす。その一方で、借金の額は変わらないため、企業や家計が抱える債務の実質的な負担が重くなる。企業にとっては、実質賃金の上昇でコスト高になるし、消費者が金を使わなくなって不況が一段と進むことになる。

 デフレの解消には、金融政策が不可欠なことは明白だ。金融政策が効果を発揮するために、財政政策の力も借りた方がいい。

 ところが、日本銀行は「これ以上の金融緩和は効かない」と言う。どんな組織でも、自分の責任を軽くしようとする姿勢に傾きがちだ。だが、日銀の主張は、医者に例えれば、薬を出しておきながら、「この薬は効きませんよ」と言っているに等しい。風邪の患者に風邪薬を出さず、風邪で痛んだ胃を助ける胃腸薬(財政政策)だけを出すのは明らかにおかしい。

 デフレを止めなければ、金融機関の経営に打撃を与え、金融システムが揺らぎかねない。金融システムに対するデフレの罪をもっと深刻に受け止めるべきだ。

 現在の消費不振は、多くの人が「お金を使わずに持っていた方がいい」と考えているためだ。これを打破するには、政府が断固としてデフレを止めるという態度を示すことが必要だ。

 具体的には、物価上昇率が年1―2%に上昇するまで、金融政策を駆使するという、弱い「インフレ目標」「物価安定数値目標」を設定することが有効だ。実際にこうした目標を設けても直ちにインフレに陥る副作用は伴わないはずだ。

 しかし、日銀は「効くかどうかはわからない。今まで使ったこともない。劇薬をずっと飲み続けてインフレになるのが怖い」という態度だ。金融緩和は円安を呼び込み、景気への刺激効果があるということは実証されている。

 政府がナローパス(狭い道)を一生懸命進んでいる時、金融政策が新しい領域に踏み込まないのは「不思議」としか言いようがない。

 英語の慣用句では、“骨抜き”のことを「デンマーク王子のいない『ハムレット』」と言う。金融政策を伴わないデフレ対策は、まさに主役のいない芝居にあたる。

◆金融システム防衛急務

 土地や株式のような資産の方が、モノやサービスに比べてデフレの進行が激しい。

 多くの株式を抱えている銀行はデフレの直撃で、深刻な打撃を受けている。融資先の企業の経営が悪化したり、担保の土地が値下がりすることで、新しい不良債権は次々に生まれてくる。

 さらに深刻な事態は、これによって銀行を通じて企業にマネーを流すという信用創造メカニズムが揺らぐと、デフレを止める金融政策の効き目も悪くなることにある。

 経済の論理を貫くと、ペイオフ(破たん金融機関の預金の払い戻し保証額を元本1000万円とその利息に限る措置)の凍結措置の全面解除は、金融機関の経営者に健全化の努力を促すために当然だという結論になる。しかし、問題は大規模な預金シフトが起こり、金融システムが揺らぐ恐れを否定できないことにある。現実論としては、全額保護の対象になる、新しい決済性預金を作った上で凍結解除する仕組みは、ギリギリの妥協点として許されるのではないか。

 株価が決まる仕組みは、投資家がお金をどの程度払って、株券を持ちたいのかというゲームといえる。これまでは、米企業の生産性に対する将来への過剰な期待が投資家の心理を支配していた。つまり、「アメリカへの投資が世界で1番もうかりそうだ」とみなされ、世界のマネーがアメリカに流入していた。

 ところが、ニューヨーク株が急落したため、資金が海外に逃避し始めている。これは東アジアで起きた金融危機と同じ構図といえる。

 株価下落は、実体経済に深刻な影響を与える。今まで資産と思っていた株式の含み益が株価下落で失われると、消費者はお金を使わなくなるという逆資産効果が出てくる。企業が設備投資を抑える動きに走るというマイナス効果にも、注意が必要だ。

 株価上昇の局面では、必要な資金は株式市場でふんだんに調達できたことから、ベンチャー企業が続々と生まれてきた。逆に、株価が下落に転じると、資金が集まらないため、創業ブームが終息することになる。

 アメリカの株価のメッキがはげたことで、2つの可能性が出てきた。第1に、世界中に株離れが波及するという懸念だ。もう1つの可能性は、アメリカに集まっていたマネーが日欧の市場に流れ込むという期待である。

 大胆な金融政策を敢行してデフレの進行を食い止め、内需を中心にした景気回復さえ達成できれば、日本が新たな資金の受け皿となりうるはずだ。

 日本は厳しい試練に直面しているが、同時に大きなチャンスを迎えたとも言える。

(聞き手 経済部 山田 哲朗)

2002年9月5日)

 

 

2)

1

2002.10.22

[直言・デフレ脱出]

(5)インフレ目標を導入せよ

岩田規久男氏(連載)

◇学習院大学教授

東京朝刊

一面

01頁

2200字

05段

写真

 

◇いわた・きくお 米カリフォルニア大バークレー校客員研究員、上智大教授を歴任。専門は金融論、経済政策。主な著書に「デフレの経済学」「ゼロ金利の経済学」。60歳。

 ◆主要ポイント 物価上昇1―3%目標 長期国債、無制限買い入れを
 日本銀行は十一日に公表した「不良債権問題の基本的な考え方」の中で、「経済の構造調整に伴い、なお不良債権の新規発生が高い水準で続く」と説明した。
 これは、ごまかしである。不良債権が増えている原因はデフレ不況にあるのに、日銀は日本経済が直面する「構造調整」に起因するとしている。この姿勢から判断すると、日銀はデフレを阻止するという本来の責務を自覚せず、放棄さえしているように思える。
 日本経済の大きな問題は、一般物価が下落するデフレと株価や地価が下がる資産デフレの進行が止まらないことにある。デフレが企業収益を引き下げ、その結果として株価も下げる。経済全体に需要がないから、土地への需要も高まらず、地価が下落する。株価や商業地の地価は約二十年前の水準にまで下落している。一般物価が安くなるデフレと、資産デフレが絡み合って、企業の財務が傷んでいる。
 こうした状況を打破するため、日銀は、一定の物価上昇率を金融政策の目標とする「インフレ目標」を導入し、全力を挙げて、あと一、二年のうちにデフレから脱却するという政策スタンスを明確に取るべきだ。
 具体的なインフレ目標として、消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率が一年後に1%、二年後には3%と、期限を切って設定する必要がある。現在、日銀は、CPIの上昇率が安定的にゼロになることを目標に量的緩和政策を続けている。しかし、これではその目標がいつ達成されるのかが、わからない。インフレ目標を導入する場合は期限付きでないと、現行の量的緩和政策と変わらなくなる。
 期限を付ければ、現在のように長期国債の買い切りオペレーション(公開市場操作)に買い入れ限度額を設けるといった、悠長なことは続けられないはずだ。日銀は現在、長期国債を市場から買い入れる額の上限を月一兆円にとどめている。その上限を撤廃し、何兆円でも、無制限に長期国債を買い入れるべきだ。
 日銀が長期国債をどんどん買い、市場で品薄になる状態を作ればいい。これにより、預金や現金というマネーはあふれるほど増える。事実上ゼロ金利の短期市場で運用しても仕方がないとなれば、マネーは株式や投資信託、不動産投信、外貨建て預金などに向かっていくに違いない。
 その結果、様々な資産価格が上昇し始めれば、企業の財務内容も改善に転じる。企業も設備投資や資産の購入に積極的になり、デフレの危機感が薄らいでいく。「インフレになるかもしれない」と人々に感じさせることが、デフレ脱出に向けた第一歩となる。
 ◆資産価格上げる政策を
 日銀は、資金を十分に供給しているのに、不良債権を抱えた銀行が貸し出しを増やせないために緩和の効果が上がらないと主張している。
 だが、この主張はおかしい。
貸し出しが増えないため、不況から脱出できないわけではない。企業はすでに潤沢な内部資金を抱えているところが多く、企業全体としては資金余剰となっている。
 デフレが収束すれば、企業は内部資金を使って設備投資に走り、生産が拡大する。内部資金が足りなくなった段階で、やっと借り入れを増やす企業が出てくる。アメリカの大恐慌や日本の昭和恐慌でも、企業の生産拡大が始まって三―四年たってから、銀行の貸し出しが増え始めたという記録がある。
 不良債権処理を加速させようとする政府の方針には、疑問を持たざるを得ない。デフレ不況が続く前提で資産査定すれば、どんな優良な貸出先も不良債権化の方向に傾斜していく。生き残れるはずの企業が倒産し、デフレ不況が深まる。
 不良債権の本格的な処理は、デフレを阻止した段階でいい。銀行への公的資金注入も議論になっているが、銀行の自己資本を増やすには、デフレを食い止めて不良債権の新規発生に歯止めをかけ、株式や土地の資産価値を上げることが決め手となる。このため、資産価格を上げるための金融政策が求められている。
 「資産価格を上げることで、バブルを引き起こすつもりか」と言う人がいる。資産価格の上昇と、バブルとは全く違う。日銀は、長期国債を無制限に買う金融政策を採用すれば、超インフレになるとも言う。しかし、デフレから脱却して、普通の物価上昇状態を通り越し、すぐに超インフレになると主張する方がおかしいと思う。
 日本の金融市場は、銀行貸し出しを通じて産業に資金を供給する間接金融が中心となっている。銀行の過大な貸し出しで銀行にリスクが集中しているところに、不良債権問題の根幹がある。
 政府は銀行にリスクが集中しないように政策面で対応することが求められる。そのためには、企業が市場を通じて資金調達する直接金融へ重心を移していく必要がある。貸し出し債権を小口化して個人投資家でも買いやすいように証券化する手法を普及させることが有効だ。
 税制の改革も欠かせない。株式譲渡益課税を軽減したり、非課税とする措置も検討に値する。株式投資に対する税制を思い切って優遇すれば、直接金融が育っていくと思う。その場合、米証券取引委員会(SEC)のようにしっかりとした監視体制や、徹底した投資家保護策を整備することは当然である。
 (聞き手 経済部 是枝智)

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